コンテンツ文化史学会2017年度大会「これからのコンテンツ文化史研究の方法(論)を考える」シンポジウム発表概論

2017年3月17日(土)に開催されますコンテンツ文化史学会2017年度大会のシンポジウム発表の概要になります。当日のタイムスケジュールなどはこちらをご確認ください。

 

吉田正高(東北芸術工科大学)

「コンテンツ文化史とは何ぞや―娯楽と教養の関係から―」

東京大学で実施されていたコンテンツ教育の実験的なプログラムにおける自主講義の名称として産声をあげた「コンテンツ文化史」という単語は、戦後の日本におけるコンテンツの歴史を特定の分野に偏らず総合的・包括的に考察するという目的を内包していたが、その柔軟さ故に、ある種の「マジックワード」と化す危険性を常にはらんでいる。本報告では、生誕10周年の節目のいま、「コンテンツ文化史」という単語の捉え直しを行い、あわせて、コンテンツ文化の享受/消費における「娯楽」と「教養」の変遷と現状を、報告者の教育現場における実体験を織り交ぜながら考えてみたい。

 

岡本健(奈良県立大学)・John Hathway(嵯峨美術大学)

「コンテンツ研究(教育)の創造的側面―芸大・美大や観光・地域関連学部でコンテンツをどう扱うか」

本発表では、コンテンツを研究、教育する際に必要とされる「創造的な側面」に焦点を当てる。発表者の岡本健は、観光・地域関連学部でメディア・コンテンツ論を教えている。一方のJohn Hathwayは、芸大・美大でコンテンツについて教鞭をとっている。コンテンツ研究、コンテンツ教育が、それぞれの場において何を要請され、研究、教育がどのようになされる必要があるのか、実践例を示しながら論じる。

 

山中智省(目白大学)

「「ライトノベル史」をめぐる冒険―その現状と課題―」

現在、我々がよく知る「ライトノベル」には複数の定義が存在しており、その形成・確立過程の捉え方もまた、論者によって実に様々である。加えて、「ライトノベル」の歴史を辿る上で重要な資料・証言等の整備、それらへのアクセス方法、ならびに研究手法の検討自体も、やはり論者個々の取り組みに委ねられている部分が多く、すでに一定の成果を上げつつあるとはいえ、まだまだ模索の段階にあると言えるだろう。こうした状況を踏まえ、本発表では、拙著『ライトノベル史入門 『ドラゴンマガジン』創刊物語』(勉誠出版)といった実践例をもとに、「ライトノベル史」研究の現状と課題について論じていく。