例会終了

26日(土)に開催されましたコンテンツ文化史学会2010年第1回例会「趣味文化研究の作法」は無事終了いたしました。会場に足をお運びいただきました皆様、発表者の皆様、ありがとうございました。当日は61名もの多くの人にご参加いただきまして、非常に活気あふれる会になりました。

司会の七邊さんからの「本学会の投稿論文の採択率の低さ(50%)」→その採択されない論文の多くの傾向として「私語り・印象論、データなき誇大理論、分析枠組(に対する反省)なきデータ分析」という点が指摘され、またコンテンツ分野の先行研究としても「歴史学、社会学、経済学、観光学、文学、メディア研究、マンガ学、ゲーム学 etc.」数多くの研究分野が挙げられるのに参照していない点が指摘されておりました。そして当日の目的として「1:作り出された作品・知識(opus operatum)、2:作品・知識を作り出すやり方・作法(modus operandi) 研究のハビトゥス」の2点の共有、さらに具体的には「問いの立て方、研究対象の構成の仕方、回答者、インフォーマントの探し方、先行研究の集め方、分析枠組・理論、データの整理法(カード、ソフトウェアなど)」といった点を考えようと提案され、3人の発表が行われました。

当日の様子は以下、twitterのつぶやきからご覧ください。

http://togetter.com/li/32075

また発表者のお一人である小山友介さんの当日の発表資料がウェブに挙げられておりますので、ご覧ください。

http://pub.idisk-just.com/fview/zg-uKV6EGRju3YoKbKWvR21_RILMzudDkf1aiZLpki8NwVw6YjGVI72tQyWLDuFvc7USJz8QOurZStPnVKvE9Q/44Kz44Oz44OG44Oz44OE5paH5YyW5Y-y5a2m5Lya77y_5bCP5bGx.pdf

しかし、当日来られた方の中には、また古典的な研究分野(と書くと語弊があるかもしれませんが)に従事している方には「コンテンツ学というものは、このようなレベルの話をしないといけないのか!」と驚かれるかと思いますが、本当にこのような話をしないといけないのが現状です。この会を開いたことによって、今後のコンテンツ研究が大きく進展することを切に願っております。いや、本当に!

明日になりました!

ついに明日になりましたコンテンツ文化史学会2010年第1回例会「趣味文化研究の作法」。委員ともども皆様のご参加をお待ちしております。また発表者の皆様、明日はよろしくお願いします。そしてまだ参加すべきかどうか迷っている方はぜひご参加ください。卒論や修論、そして今後の研究でサブカルチャーやコンテンツ、ファンやファンダムといったものを対象に研究を行おうと考えている人はぜひご参加ください。そうでない方ももちろんお待ちしております。

明日の例会の詳細な情報(参加登録フォーム・時間・場所など)は下記のページからご確認ください。

http://www.contentshistory.org/2010/05/17/730/

さて、参加される前に読んでおくと理解が深まるサイトがございます。

http://it.nikkei.co.jp/digital/news/index.aspx?n=MMITew000024072009

明日発表していただく小山友介さんの以前の発表に関するレポートです。ゲームジャーナリストである新清士さんによる記事で、非常に分かりやすくまとめられております。コミックマーケットで実際にどれだけの人が創作を経験しているのかが可視化され、これまで「色々な人が参加してきた」とか「漫画家の○○さんはあそこで売ってた」等々の印象論で語られることの多いコミケットがリアルに浮かび上がってきます。そのほかのデータもございますので、明日はこれらを踏まえたお話をしていただけることと思います。なお、小山さんのKDDI総研R&A誌での文章は下記から読めます(PDF)。

http://www.kddi-ri.jp/pdf/KDDI-RA-200904-02-PRT.pdf

また、玉川さんは以前、「コミックマーケットにおける同人作家の商業誌経験」という論考を『マンガ研究』9号(2006年)に発表されております。こちらもC66での調査によって、「同人」と「商業」という意識や商業誌へ作品をどれだけ掲載したか等々がデータから語られており、明日はさらに深いお話が聞けると思います。

『コンテンツ文化史研究』3号のお知らせ

遅れておりました『コンテンツ文化史研究』3号が出ます。今度の例会に合わせての発行となりますので、例会に参加される会員の皆様にはいち早くお渡しいたします。その他の会員の方は事務局から発送いたします。

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『コンテンツ文化史研究』3号目次

<インタビュー>

本田透氏インタビュー

<自由投稿論文>

七邊信重「「同人界」の論理―行為者の利害-関心と資本の変換―」

〈特集「コンテンツと場所」〉

特集「コンテンツと場所」にあたって

〈依頼論文〉

玉井建也「物語・地域・観光―「稲生物怪録」から『朝霧の巫女』、そして「聖地巡礼」へ―」

〈投稿論文〉

岡本健「コンテンツ・インデュースト・ツーリズム―コンテンツから考える情報社会の旅行行動―」
今井信治「コンテンツがもたらす場所解釈の変容―埼玉県鷲宮神社奉納絵馬比較分析を中心に―」

<参加記>

三宅陽一郎「IGDA日本代替現実ゲーム部会 第一回研究会「ARG入門:体験型エンタテインメントの現在と未来」参加記―新しいコンテンツの展開の形  ARG (Alternate Reality Game) ―」

<書評>

山口浩「出口弘・田中秀幸・小山友介編『コンテンツ産業論―混淆と伝播の日本型モデル―』」

<第二回例会の記録>

<二〇〇九年度コンテンツ文化史学会総会の記録>

例会に向けて

すっかり月報のようになってしまいましたブログです。皆様。お元気ですか。とりあえず関東地方は梅雨入りをしております。

さて、ついに来週に迫ってまいりました。6月26日(土)にコンテンツ文化史学会2010年第1回例会「趣味文化研究の作法」が開かれます。会員の皆様も、非会員の皆様もぜひともご参加ください。オタクや鉄道マニアを研究することに興味はあるのだが、学術的な場所に参加して良いのかどうか迷っている方もぜひご参加ください。お待ちしております。

http://www.contentshistory.org/2010/05/17/730/

なお、昨年の例会および大会とは場所が違いますのでご注意ください。JR田町駅を出たところですよ!

さて、例会ですが、昨年の2回は私がある程度関わって企画していきましたが、今回は司会をつとめます七邊さんが企画をしたものになります。従いまして、私はどのような会になるかを妄想するしかないわけです。

とはいえ、「趣味文化研究の作法」の趣旨文に書かれておりますように、「「私語り」や「主観的印象論」、あるいはデータなき「誇大理論」に陥らずに、いかに調査・研究していくかを考えること」に尽きるかと思います。これを踏まえると2つの点が重要であると想定されるでしょう。

  1. 趣味文化を享受する自分自身と、それを対象とし研究する自分自身の距離感
  2. 趣味文化を研究するにあたってのデータ(質的・量的)の取り方、および研究の方法

という2点でしょうか。前者はより精神的な話ですが、現在進行形で変容していく趣味文化自体を研究するにおいて、私たち研究者自身もまた同時代に存在することはどうしても必至になります。当然ですね。ただその場合、よくも悪くも雑音のように入り混じってしまうのが、同時代的存在であるがゆえに趣味文化を味わっている研究者自身の感情や主観でしょう。これが入ってしまうと途端に研究論文足りえません。自分自身も観察対象や観察事象に包括されうる存在であることを常に認識しながら、そこからの距離感を絶妙に保ち、研究を行う。この点は社会学や民俗学、文化人類学などで行われる参与観察もまた重要な点になってくるでしょう。

後者はより実態的な話になってきます。印象論的なものを排除していった場合、どのようなデータを取り、それをどうやって研究へと生かしていくのか。趣味集団にどうやってアンケートやインタビューをお願いするのかといった細かい点も重要になるかと思います。特に既に先行して存在するオーラルヒストリーやその他、聞き取り調査研究とどう比較しつつ、コンテンツ学に生かしていくのか。大きな課題でしょう。

という話になるかもしれませんし、違うかもしれません。